企業とNPOのパートナーシップ 山本正

さまざまな社会経済問題を抱えるアジア諸国。難問の解決には政府や国際機関の力だけでは限界があり、非営利セクターに期待が集まる。財政基盤や組織が未成熟なアジアのNPOに対し、企業はどんな貢献ができるのか。「シビル・ソサエティ」の発展に果たす、企業とNPOの役割と課題を探る。

 アジアでは企業は従来のように資金の提供を行うだけではなく、NPOとパートナーを組んで自主事業を行うことによって、フィランソロピー活動に新境地を開く傾向を見せ始めている。NPOとの提携は企業のフィランソロピー活動に幅広い市民の参加を実現し、また支持を得る上でも効果的であるとの理解が深まっている。
 日本では、NPOに対する政府の期待が高まり、政府からの資金援助が増えることによって、NPOの自律性が損なわれるのではないかとの懸念も生じている。様々な議論があるが、なぜ企業とNPOはパートナーシップを組むのか。いくつかのメリットを挙げてみる。
企業の視点
「コミュニティー活動を容易にする」
 フィランソロピー事業の重点を従来型の金銭寄付から、自らが実施するコミュニティー活動へとシフトする企業が増えてきている。企業単独では効果的な活動ができるとは限らず、地元のコミュニティーのニーズを良く知り、それに答えるための専門知識と革新性を持つNPOが有力となる。
「企業戦略を実行する手立て」
 世界的に競争が激化する中で、技術力があるからといって企業はかつてのように安心してはいられない。企業が競争に打ち勝つためにはよい企業イメージを得ることが決定的になっている。ただし、イメージづくりやPRだけの目的でNPOとの連携を図る企業に対しては、NPOは大変批判的である。
NPOの視点
「重要な資金源」
 公的資金にのみ依存していると政府のコントロールを受けかねないが、複数の資金源を持つことによってそれを避けることができる。
「企業の持つノウハウの活用」
 マーケティングひとつとっても、企業から学ぶところは大きい。
「経営感覚を学ぶ」
 NPOには不足しがちなアカウンタビリティや結果重視の姿勢などの経営感覚が強まる。NPOは「よいことをしている」というプロセスのみに満足するのではなく、事業がもたらす社会的インパクトを高める努力をしなければならない。
「政治的影響力の獲得」
 日本でもNPO法案の審議において、経団連が企業セクターの代表として重要な役割を果たしている。経団連が国会を頻繁に訪れ、側面支援活動が法案成立のひとつの原動力となった。
 トヨタエイブルアート(障害者芸術)支援、安田火災の美術(バブル期の「ひまわり」購入)から環境への社会貢献活動など、企業は利益追求だけでなく、地球市民としての役割をもっていなければならない。慈善事業なんてイメージ作りのためだろうと生意気な見方をしていたが、人、モノ、金が要るのは事実。今後企業とNPOには、双方を市民のために有効に作用させる自浄装置としての関係が築かれることを求める。

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