アルジャーノンに花束を ダニエル・キイス

アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

チャーリィは陽気な32歳。生まれながらの知的障害者だ。パン屋で働き、夜学に通う。そんな彼に「頭をよくしてあげよう」と科学者からの突然の申し出があった。未知の、危険な実験の被験者になるのだ。しかし、チャーリィは喜んで手術のため入院する。同じ実験を、白ネズミのアルジャーノンも受けていた。やがてIQが185にまで高まり、超天才となったチャーリィは自我が強まり、知識欲も旺盛になり、人々を驚かす。はたして、チャーリィは?―SFの傑作であると共に、読者を深い感動に包み込む不朽の長編小説。

 恩知らずに聞こえようが、私がここで憤懣やるかたないのはそれなのだ――つまり私をモルモット扱いにする態度である。現在のような私を作り上げたという、あるいは将来、私のような人たちも本当の人間になっれると言うニーマーの口癖である。
 彼が私を想像したのではないと言う事実をどうしたら理解させられるだろう?
 精薄者にも人間の感情があるのだということを理解しないがゆえに彼らを見て笑う人々を同じ過ちを、ニーマーも犯しているのである。私がここへ来る前も人間であったことを彼は認識していない。
 私は怒りを抑制すること、性急にならないこと、待つと言うことを学んでいる。成長しつつあるのだと思う。日を追って、自分のことが良く分かってくる。漣のようによみがえり始めた記憶はいまや、怒涛となって襲いかかる……

 ついしん。どおかニーマーきょーじゅにつたいてくださいひとがわらたり友だちがなくてもきげんをわりくしないでください。ひとにわらわせておけば友だちをつくるのわかんたんです。

しょうもない自我のために、人に愛情を与えられない悲しさ。しょうもない自我のために、他者を許容できない悲しさ。そんな自我のために大切な人を傷つけていないだろうか?すばらしいものを得る機会を失っていないだろうか?
★★★★