男女の怪 養老孟司 阿川佐和子

男女(オスメス)の怪

男女(オスメス)の怪

恋愛は病気、結婚は契約? なぜ女は男より強くてたくましいのか。男はどうしてデリケートで口下手なのか…。男と女の間にある「壁」について、性格や言葉、美意識、遺伝子など様々な視点から探っていく、丁々発止の傑作対談。
「女性の地位は都市下するほど低くなる」
女性は月経と妊娠、出産が身体性に出る。ところが、都会というのは意識の世界だから、やむを得ない身体的なものが露呈するのは下等なわけ。だから、意識という頭の世界になると女性の地位は下がる。逆のところでは、女性の地位が遙かに高くて女性中心の社会。例えばブータンは長女相続。

国語で反対語を教えるのはよくないね、反対語と思われているのは常に補完語ですよ。内とか外とか、男とか女とか。男と女を対立関係として捉えるから、フェミニズムになっちゃう。実は男と女を合わせて人なんだから、常に補完し合ってるんですよ。
内と外なんか典型で、丸を描いたら、それより中は内で、外側の空間は全部外なんだから、両方合わせて世界。人類の基本語彙っていうのはそうなってる。それがちょっと知恵がついて、反対概念だと思いこんでるんだね。

 違う社会やシステムの中で起こっていることの一部の要素だけを取り出してきて比べても、おかしなことになっちゃう。それぞれがつながっているものを一部切り出してきて、どこがどう違うと言っても、それじゃあ意味がない。
 アメリカ人の教育では進化論と創造説を公平に教えるべきだという意見が。

 うちの娘がアメリカの学校に行ってたとき、クラスメイトから進化論を信じるかって聞かれて「当然でしょ」って言ったら、「じゃあ、お前は猿の子孫だな。俺は違う」って言われたって。「俺は人間だからな」って(笑)

 日本は「無思想の思想」。思想がないという思想。「思想は思想として純粋に思想であることに価値がある」。「思想は世間に干渉しちゃいけない」。三島のように書くだけだったら、立派な小説家であり思想家と言われるんだけど、それを現実に応用しようとすると排除される。

★★★★