号泣する準備はできていた 江國香織

号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた

きらきらひかる』や『落下する夕方』など多数の作品で、揺れる女性の内面と恋愛模様を描いてきた江國香織の短編小説集。第130回直木賞受賞作品。
『号泣する準備はできていた』

 外国を好んであちこち旅していたころ、よく墓地を散歩した。墓碑銘を読むのが好きだったのだ。自分の墓碑銘を想像したりした。
『ユキムラアヤノここに没す。強い女だったのに』

「私たち、もうじき墜落するわ」
 もう笑い声も甘い言葉もどこをどう捜しても絞りだせないのに、依然としてらくらくとするするとしかもぴったりと組み合わさってしまう残酷な身体同士を重ねた後、私は隆志にそう言った。

『そこなう』

 私は新村さんが大好きなのだ。新村さん以外の人間は、男の人に思えないのだ。新村さんだけが私のいのちで人生で、ラブですべてなのだ。それだけは神様に誓える。いつでも。胸をはって。
 これ以上新村さんを好きになってしまわないように、私は最新の注意を払ってこなくてはならなかった。
 どうでもいいことだけれど、歯止めは朗くんだけじゃなかった。

 うぉぉーーーい!!!って突っ込んだよ……

★★★