男子のための人生のルール 玉袋筋太郎

男子のための人生のルール

男子のための人生のルール

ひとは、男に生まれるのではない。男に「なる」のだ-。自らのからだやコンプレックスとの向き合い方、人との関係のいちばん基本の姿勢など、玉袋筋太郎が満を持して子どもたちへおくる、最強の「人生のルール」。

 大人ってカッコいいなあ。大人って、なってみたらおもしろそうだなあ……って、ガキのころから思ってたんだ。
 例えば、小学生のころ、新宿のションベン横丁で飲んでる人がうらやましくて、「オレも早くああいうところで飲みてえな」ってあこがれて、もう毎日のように横丁あたりに通ったよ。ションベン横丁の大人たちにどうあこがれたのか、なかなかこの感覚をわかってもらえないかもしれないんだけどさ。職業、年齢関係なく、赤提灯のカウンターで仲良く話したりしてるのって、憧れたよ。サラリーマンが仲間とこう、肩組んでフラフラしてるのもステキだなあとかさ。
 だって、オレたち小学生なんて、肩組んだってふつうにまっすぐ歩けちゃう。それにひきかえ、酔っ払いは千鳥足でこう……ぐらぐら、ぐだぐだやってんの。楽しそうじゃない、なんか。駄菓子屋のジュース飲んだくらいじゃ、ああはならねえなあ、いいなあ大人って。そんなふうに思ってたんだ。

キミが、笑っている写真

 誰だって、どんな子供だってたいてい、自分のちっちゃいころの写真を持ってるだろう。自分なりに「これ、けっこうかわいいよなあ」「雑誌のモデルでもいけてたんじゃないの」って思っちゃう写真だよ。
 公園のすべり台の上から手を振ってる写真とか、アイスクリーム食べてすごくごきげんな顔してる写真とか。学校に上がる前くらい、まだ小さくて、こっち向いて笑ってる写真なんかが、あるだろう。
 その写真は、キミの親父が撮ったんだとする。だとしたらさ、その写真に写ってんのは、キミの親父が、確かに見た光景なんだよ。キミの親父が、確かに見た光景なんだよ。キミの親父がこうやって世界を見ていた、その光景なんだよ。
 その真ん中で笑ってるのが、キミなんだよ。
 親父がどんな気持ちでキミら子どものことをファインダーから除いてたか、考えてみろよ。もう、好きで好きでしょうがない、って思ってんだ。写真としては一枚かもしれないけど、その向こう側で撮ってたキミの親父の気持ちを思ってくれ。どうか忘れないでくれ。
 親の愛情には、照れるなよ。
 そして、たった一枚でもいいから、親が取ったキミのいい写真を持っておけ。
 キミが笑ってる、そんなすばらしい写真を撮れたりしたんだもの。親とのあいだに溝ができたって、溝が深すぎてつながりを見失いそうだって、大丈夫なんだ。
 相思相愛だったんだよ、キミと親は。いまも相思相愛なんだよ。その写真を見たらわかるだろ? だって、キミは笑ってるだろ?

★★★★