おじいさんは山へ金儲けに 村上龍

おじいさんは山へ金儲けに

おじいさんは山へ金儲けに

本書は、「投資」の概念と、その基本的知識を提供することを目的にして、日本の昔話から代表的な十一編を選び、目的にフィットするようにアレンジを加えたものである。

投資の心得11箇条
第一条 時として、投資は希望を生む(かちかち山)
第二条 将来の価値と現在の価値を比べると言う考え方が     基本だ(桃太郎)
第三条 投資したお金は、単なる「賭け」ではなくて、働いている(浦島     太郎)
第四条 投資について、自分で納得できないことはしなくてもいいし、     してはいけない(一寸法師
第五条 リスクは軽量させた不確実性であり、大まかでも検討をつけ      ることが大切だ(さるかに合戦)
第六条 リスクなしにリターンは増えないが、ハイリスクがつねにハイ     リターンというほど世の中は甘くない(わらしべ長者
第七条 一人一人はお金について違っていることを認識せよ(花咲か     じいさん)
第八条 資産運用でも人生を考える上でも、ポートフォリオと言う考え     方は大切だ(舌切りすずめ)
第九条 ”確実なマイナス”であるコストを軽視してはいけない(鶴の恩     返し)
第十条 過去の行動にこだわらずに、将来のみを見て現在の行動を決     める(かぐや姫
第十一条 お金は、あくまでも手段だけれども、とても大切なものだ        (笠地蔵)

リスクについて考えるのに意味があるのは、それに関与するかしないかと言うことを具体的に決められるからだ。単に不確実だとか、これはこうあって欲しいけれど実現しないだろうと言うことではなくて、それがどの程度不確実なのか、どのくらいの確立で実現するのかと言うことを考えることによって、それを程度の問題として考えられる対象にできるということだ。つまりリスクと言う考え方は「考えられる対象を広げるための技術」だと言うことになる。

社会参加意識あるいは人生の選択を考えると言う意味で、投資という考え方を思考法のなかに積極的に取り入れるといいのではないか。
最後にむかし話に隠れている現実。

むかし話に登場する貧乏なおじいさんは、どういうわけか、たきぎを売りに行くことが多いのですが、それは、貧乏なおじいさんには、たきぎしか売るものがないからです。たきぎしか売るものがないから、そのおじいさんは貧乏なのだ、という言い方もできます。

逆説的に言えば、貧乏なおじいさんにならないために、優れた商品、あるいは優れた技術、知識を売らなければならない。
★★★