エンジェル 石田衣良

エンジェル

エンジェル

夏の夜、自分自身の埋葬を目撃したゲームソフト会社のオーナー・掛井純一。何者かに殺され、「幽霊」として甦った彼は、失われた記憶と自らの死の謎の解明に挑むが…。
 タイトルのエンジェルとは白い羽を生やした神の使いではなく、ベンチャー企業の創業時に立ちあがりのための資金=シードマネーを提供し、創業を援助する個人投資家のこと。ベンチャーキャピタルほどは株数を要求せず、絶対的な経営権を確保しようともしないそうだ。まさに天使だけど、どこに旨みがあんの?
 難しそうな話しはこれだけで、あとは幽霊の恋物語。主人公は風使いの幽霊のおじいさんに出会って、自分も能力を使えるようになる。(「幽霊」「能力」ときたらジョジョを想起せずにはいられない!)恋人を守るために。生きてる時はゲームソフト会社をやってただけに使えるようになる能力は電気。最初はエアコンの電源を入れるくらいしかできないが、修行していくうちに電子錠をロックしたりステレオのボリュームを上げたりできるようになる。最後には信号の青の時間を長引かせることができるまでに成長する!ってこれじゃあ成長性Eじゃないか!! しかし主人公は限定された能力を駆使し、黄金の意思で恋人をヤクザ(暗殺者チーム)の手から守り抜く。そして最後は自らを殺した恋人の子供へと、その魂を次の世代へ繋ぐ。まさにこれは人間賛歌だ!
 幽霊は全く信じていないけど、スタンドを信じている自分に気づき恥ずかしくなった秋の夜。
★★