1973年のピンボール 村上春樹
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1980/06/17
- メディア: 単行本
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1973年9月、この小説はそこから始まる。それが入り口だ。出口があればいいと思う。もしなければ、文章を書く意味なんて何もない。
大学を卒業し翻訳事務所を設立した僕。仕事は順調に行っている。双子とも一緒に暮らしている。一見過不足なく、安穏とした日々を送っているように思える。(過不足なくといったが、やっぱり双子は過剰な幸せだ。両側から耳そうじしてもらうシチュエーションはやばい!)だがその幸せな日々も僕の前を通り過ぎていく。
「全てのものは通り過ぎていく。」
決してとどまることなく。そして“全て”は“僕自身”も例外ではない。僕は同じ場所にとどまり続けることはできない。それはとても悲しいことかもしれない。けれど、僕は通り過ぎていくなかで何かを選択していくはずだ。同じような生活をリプレイしていても必ず選択するときは来る。その来たる日に備え、何かを感じながら生活していかなければならない。鼠がそうであったように。そして、ピンポールと再会したときベストスコアを汚さないためにも。
別れ、人生はそこから始まる。それが入り口だ。出口があればいいと思う。もしなければ、人生を生きる意味なんて何もない。
★★★★