ダ・ヴィンチ・コード(下) ダン・ブラウン

ダ・ヴィンチ・コード〈下〉

ダ・ヴィンチ・コード〈下〉

 歴史は勝者により語られるもので、埋もれた過去の中にこそ真実が眠っている。私たちはそれに目を向けなければならない。しかし真実だけがすべてじゃない。そんなことを再確認する話だった。
 私にはキリスト教への憧憬がある。といってもそれは、自分が苦境に立たされたときに神を精神の拠りどころとしたいという気もちではない。映画や本の中ではしばしばキリスト教がモチーフにされる。大洪水を前に神に祈りを捧げ寄り添う家族。聖書の一説を読みあげ、敵の頭を射抜く狙撃手。メルギブソンを称える者、非難する者。そういった気持ちを異端の立場からではなく単純に共有したいという気持ちだ。バカみたいにイエス様に従属したい。もしくは罵倒したい。そんな倒錯した気持ちを持たせるのです、宗教世界は。
 余談だが、これを読んでいる時ローマ法王死去のニュースが飛び込んできた。そういう運命的なものの積み重ねが信仰を生むのかもしれない。
 もうひとつのテーマは家族の絆。ダ・ヴィンチ・コードヒューマニズムという視点で見るなら、それはヴェルタースオリジナルな物語。
 私のおじいさんがくれた始めての暗号
それはクリプテックスで、私は4才でした。その謎は象徴的でコンプリケイトで、こんな素晴らしいクリプテックスをもらえる私は、きっと特別な存在なのだと感じました。今では、私がおばあちゃん。孫にあげるのはもちろんクリプテックス。なぜなら、彼もまた、特別な存在だからです。
★★★