サイケ 姫野カオルコ

サイケ

サイケ

わしがインポになったのはジャンプが原因である──わし(♀)の衝撃の告白「少年ジャンプがぼくをだめにした」等、サイケでモーレツな1970年前後を舞台に描く、疚しくて快感な傑作短編集!
 60年代後半から70年代前半の持つ空気感が好きだ。安保闘争ベトナム戦争学生運動、万博……。その時代に生きてみたかったと積極的に思える唯一の時代だ。今に置き換えるなら9.11、イラク戦争ベンチャー企業によるM&A、愛知万博……。60年代と同様に歴史に重大な事件は刻まれた。しかし小説の中で感じる60年代にあって2000年代にないものは何だろうか。それはその時代を生きた人が渇望していた暑苦しいまでの「希望」のような気がする。
 『イキドマリ』
 太った慶応出身会社員のキモイ話。キモくて爆笑!アンガールズどころのキモさじゃない!!
 『少年ジャンプがぼくをだめにした』
 みんなジャンプの影響を受けて生きてきた。夢、友情、笑い、エロス、トラウマ……みんなジャンプで育んだ。思い返せば「すごいよ!マサルさん」がぼくをだめにした。「少年ジャンプがぼくをだめにした」というタイトルだけで友達と一晩では語りつくせないほどおもしろい話ができそうだが、この小説のオチは想像を飛び越えたおもしろさだった。おもしろいだけじゃなく、ちゃんと文学してる。大傑作。
★★★★★