ひとりずもう さくらももこ

ひとりずもう

ひとりずもう

『さくら日和』以来の、6年ぶり書き下ろし。著者が最も得意とする少女時代に加え、今まで書いたことのない「思春期」「青春」のエピソードが満載です。

 やっぱり貧乏な頃のエピソードはおもしろい。読んでてハラが立ってくるくらいのさくらももこのダメ青春時代。だけどなんの虚飾も無く自分のダメさ加減をさらけ出せるところにある意味関心した。そして最後はじーーんとくる展開。

 何もしない青春を謳歌し始めた矢先、いつもの通学路で自転車に乗った男子学生が三人ばかり、次々と通過して行くのを何気なく見ていた私は、その三人の中の一人に一目惚れしてしまった。
 三人が通過した後、私はかばんを落としたのだ。自分が手でしっかり握っているものを話して落とすなんて、一目惚れでもしなければそんな事はしない。だからこれは一目惚れなのだ、と私はかばんを拾いながら悟った。
 あの人は、私の望んでいた貧乏な好青年ではなさそうだ。どう見ても貧乏ふうなところが見当たらない。何らかの苦労をしているようにも思えないし、きっときちんとした家庭のおぼっちゃんに違いない。
 だが、もしかしたら100万分の1ぐらいの確立で、貧乏かもしれない。そうだったらいいなァ、できれば、いやぜひ、そうでありますようにと、むこうにしてみりゃとんでもない事を毎晩星に祈った。

 自分には少し無理かもとか逢ってないかもと感じたら、微調整を考えてみることも大事だと思う。私の場合は、一度トライしただけでいきなり大きな方向転換を考えたりしてみたのだが、結果的には正当な少女漫画というのは自分には合っていなかったので、今の作風にすると言う微調整を行ったのだ。
 ひとつのスタイルをずっと追い続けてなかなか上手くゆかなかったら、もしかしたら人生の莫大な時間を無駄にしてしまうかもしれない。
 自分のできることと自分のレベルを冷静に自覚し、それなりの手ごたえを感じれば、まっしぐらに挑戦する時期があることは素晴らしいと思うが、状況に応じて対応できる柔軟な心と言うのも非常に大切だと私は思う。
 簡単にまとめると、夢があったらやってみて、どういう具合か判断し、調整が必要ならそうしたほうが良い、という事である。

無闇やたらに努力しない、さくらももこらしい人生論だなあ。
★★★★