見仏記 海外編 いとうせいこう みうらじゅん

韓国では急な石段を腿上げ運動で山の上の寺を目指し、タイでは狭く暗い壁の中を迷い、中国では延々と夜汽車にゆられ、炎天下のインドでは、往復16時間、自動車で仏像を見にゆく。仏像中毒者コンビの汗と笑いの記録。
 いとうせいこうの考察はすこしマイルドになり1冊目よりもいい感じで肩の力が抜けてきた。一方みうらじゅんは相変わらず。仏とみやげものでテンションアップし、それ意外のものにはほとんど興味を示さない。

 昼食をとってから、すぐに故宮へ行った。映画やドキュメンタリーで見たことのあるあの高い壁の前に立って、私は思わず雰囲気に飲まれ、ため息をつきかけた。しかし、みうらさんときたら、あくまでクールである。
「いとうさん、ここ仏あんの?」
「ない」
 その短いやり取りで、全ては終わった。集中力を全てなくして、我々は歩き始めた。馬鹿でかい敷地を歩きながら、みうらさんはこんなことまでつぶやいたものだ。
 「こんだけ歩いてたら、普通ローソンあるでしょう。ここ、不便だよ。」

 むやみに有難がらないみうらじゅんが好きだ。
★★★