不倫 姫野カオルコ

不倫(レンタル)

「だれか、私にセックスをしてください」売れないエロ小説家、力石理気子。美人なのに独身で、しかも未だ処女の彼女が、ひたすら「セックスをしてくれる男」を捜し求めて奮闘する、生々しくもおかしい、スーパー恋愛小説。
　

　セックスはワンセットが10ゲーム

　エルメスのスカーフを好きな人がいて、その人がチョコレートを好きでもおかしくは無い。エルメスのスカーフは食べられないし、チョコレートは首にまけない。「好き」という感情にも種類がある。
「でもさ、チョコレートがすごく好きな人はそのうちチョコレートを首に巻きつけたくなると思うの。エルメスのスカーフがすごく好きな人はそのうちスカーフを食べたくなると思うの。」
「でも。それでもしたくなるの。そりゃ、チョコレートとエルメスのスカーフの比較なら“できないでしょ、そんなこと”っていうのはわかるわよ。でも、人が誰かを好きになる感情は、食べ物とスカーフにはたとえられないじゃない」
「なんで？」
「何でって、当たり前じゃない。感情なのよ。人の感情って、そんなメカニカルなもんじゃないでしょ」
「安定に満足してるけど、胸がときめく欲望にもひかれる。女ってよくばりよね」

★★