ヘンな事ばかり考える男ヘンな事は考えない女 東海林さだお
- 作者: 東海林さだお
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/01
- メディア: 単行本
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似顔絵について
似顔絵というのは、いかに似せるかじゃなくて、いかに離れるかなんですよ。その距離が長ければ長いほど面白い。
コロッケのモノマネが職人芸な理由。
『さあ、手づかみで食べよう』
西洋の人たちは、ついこないだまで手づかみで食べ物を食べていたそうだ。フォークが使われだしたのは12世紀からで、イギリスに至っては、少なくとも17世紀までは手で食べていたと。
留守番が厳格だった頃の話
不意に柱時計がボーンと鳴る。
退屈と柱時計は、とてもいい関係にあった。
雨の日とき、ぼくは水滴をじっと見ながら何かを考えていたのだろうか。
晴れの日のとき、蟻の通行をじっと見ながらぼくは何かを考えていたのだろうか。
たぶん、何も考えていなかったような気がする。
何もしない時間。何も聞こえない時間。何も考えない時間。ただぼんやりしているだけの時間。
いま、人生の後半に差し掛かって少年時代を思い返すとき、いちばん懐かしく思い出されるのはこうした空白の時間である。
あの退屈が懐かしい。あのぼんやりが懐かしい。あのボーン、ボーンでふとわれに返る自分が懐かしい。
味わい深いね。
★★★