沖で待つ 絲山秋子

沖で待つ

沖で待つ

「おまえさ、秘密ある?」住宅設備機器メーカーに入社して福岡支社に配属された同期の太っちゃんと女性総合職の私。深い信頼と友情が育っていく。そして太っちゃんの死。太っちゃんとの約束を果たすべく彼の部屋にしのびこむ。第134回芥川賞受賞作。
約束どおり太っちゃんのHDDを壊す私

 これは、太っちゃんの棺桶だ。
 私は棺桶をこじ開けて、太っちゃんの死を傷つけようとしているのだ。
 中には銀色の鏡のような円盤が入っていました。鋭く指すように光を反射する、静まり返った円盤でした。
 これが、死なんだ。
 と思いました。すべてを拒否するように眩しかったからです。

 福岡の街が出てくるととりあえずうれしくなる。太っちゃんは仕事仲間以上の絆を感じてたんじゃないだろうか。それとも社会人になるとそんなのを超えた関係性を築けるようになっていくのかな。
 それにしても鍵を渡してHDDを壊してくれって言い合えるような男女の友情ってのはあり得るのか?“同期”という親密感と“同期だから”っていう距離感がそれをなし得るのか?おもしろい。
★★★★