オーケンのめくるめく脱力旅の世界 大槻ケンヂ
- 作者: 大槻ケンヂ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/10
- メディア: 単行本
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『障害者プロレスを見に行った』
実況がスゴイ。
「小学校3年で親に捨てられ養護施設へ入所。IQ81のため、高校に進学できず彼は社会の荒波へ投げ出された。流れ流れてドッグレッグスにたどり着く、親なし家なし知能なし!菓子パンマン!」
「仕事、妻、幸福。お前は俺の持っていない全てのものを持っている。だから俺はお前を許さない!」という、それけっこうマジなんでしょというアナウンスに乗せてパンツ一丁の「バツイチロー」選手が登場。セコンドには全身をシーツにくるまれたその名も「E.T.」選手。おいおいそのネーミングはNGだろう。ちなみにET選手の顔は竹中直人の「笑いながら怒る人」をバッチリキープ。バツイチロー選手に対するは第三代障害王のノーシンパシー選手。「はねてますはねてます!ノーシンパシー選手今日もはねてます!」「なおノーシンパシー選手への、障害のある手足への攻撃は反則とみなされます。」
壮絶な試合に対する実況はといえば「まーた障害がふえちゃいそうだーっ!」「これ以上増えてどーするんだーっ!」
本人たちが好きでやってるにしてもこれは楽しめないだろう…
『酔拳を見に栃木へ』
国家元首を命がけで守る一家の下に産まれた清水伯鳳。母親から引き離され学校へも通わず父と祖父によるスパルタの日々を送る。バランス感覚を養うために飯は必ず片足立ちで食べ、寝るときも父と祖父の襲撃に備え常に仮眠常態。ペットは蛇とマングース、その死闘を見て来たるべき時に備えイメージトレーニングするのであった。
やがて20歳となった彼は、世界各国のプロボディガードたちを統括する秘密組織「闇部隊ブラック」に入隊するため、世界中のボディガード候補とともに地獄の特訓を開始する。ジャングルにつきおとされ、数日間さまよい、蛇を喰い、数々のガンバルマン的修行を終えてついに研修卒業テストを受けた。それは…
①麻薬中毒から更正する
②電気ショックに耐える
③足の指のあいだにキリをさす
この3つから好きなものを選べ!というあまりにもトンチとエスプリの効いた3択問題だった。結局彼は③を選び見事テストに合格する…
新しき門出に意気揚々と帰国する伯鳳。だが、待ち構えていた彼の父は、およそ常人には理解不能な提案を彼に投げかける。
―――伯鳳よ、お前は強さばかりで笑いというものを知らない、それでは真のプロボディガードになれない…伯鳳よ、闇部隊ブラックに入隊する前に、お前は笑いの勉強のために萩本欽一の弟子になれっ!――
そして言われるままに、清水伯鳳は欽ちゃんの弟子となったのである。
後に欽ちゃんは伯鳳氏について尋ねられこう懐かしんだ。
「あー知ってるよー、彼はマジメなおとこだったねー」
★★★★